着信あるある
数日前のこと。
昼下がりの市立図書館。
高校生のテスト期間が終わったせいか、図書館はいつもの静けさを取り戻していた。
席はほどよく空いている。私はいつものようにスタディーコーナーでパソコンをいじりながら、読書に励む。
周りを見渡してみる。
なんとなく見知っている顔がちらほら。
大学生風の茶髪ねえちゃんは、最近暑いせいか極端に短いシャツで、細い腰回りを見せている。資格かなんかの勉強してるんだろう。
メガネのおばさんは、美術資料を見ながらスケッチしている。
そして中年おじさんたち。パソコンで何か作業しているが、たぶん株とかやってたり、勉強してたりするんだろう。働いてる気配がない無職風おじさんたち。自分探し?おじさん。自分磨き?おじさん。あるいは職探し風おじさん。私の同志たち(笑)。図書館に通うようになって、私は一人で勝手にシンパシーを感じている。
「タラタッタッタッタッター、タッタッタッ、タッタラタッタッタッタッター……」
急に静寂が破られた。
誰かのカバンの中から着信音が聞こえている。
着信音と言えば、一昔前は「プルルルルルー」とか「ジリリリリー」だったけど、最近は変わってしまった。なんだか中華風の着信音になった。
なんで中華風と私が呼んでいるかというと、昔仕事で中国人と商談してたき、彼らは商談中でも普通に電話で他所と話すのだが、その時の着信音がこれだったから。「ああ、中国人の着信音はちょっとメロディー違うんだなー。中国っぽいな」と思った事に由来するのだ。後で知ったことだが、この着信音は普通に最近のスマホには搭載されてるから、別に中華でもなんでもないのだが。
話を元に戻す。
電話は無職風おじさんのカバンの中から聞こえていた。
無職風おじさんが慌ててカバンをごそごそしている。
うんうん、マナーモードにし忘れたんだろうな。よくあるよねー。早く止めて音出ないようにしてね。
私は生暖かい目でおじさんを見る。ほかの人たちも同様に横目でおじさんに視線を送る。たぶんおじさんは視線が集まりつつあることに気付いている。
「あっ」
カバンからスマホを取り出したおじさんが、小さく声をあげた。
なんとなく、わざとらしい「あっ」だった。独り言のようでいて、皆に聞こえるような感じの「あっ」。
「もしもしー。ええ、お世話になっておりますー。ええ。ええ……」
って、電話に出るんかい! ここで!! いったん切ってかけ直すとかしろよ!!
あーなるほど、さっきの「あっ」はちょっと大事な相手だから、これからここで話しますの前振りだったのね。
おじさんはなおも話し続ける。注文がどーのこーの言っている。出社したらどうのこーの言っている。
なぬ、おぬし無職じゃなかったのかよ!!!
おわり