親愛なるあなたへ
昨日いつものサイクリングロードで、久しぶりにあなたを見かけました。
あなたは何も言わず、昔と変わらぬその美しい姿で、ただそこにしんとしてたたずんでいましたね。
あなたと初めて出会ったのは、私が物心ついたかどうかという頃でした。私は祖父の田舎に向かう車の中で、遠くの河原にあなたを見つけました。あなたはあの時も何も言わず、しんとしてたたずんでいましたね。
あのとき私はあなたのことが知りたくて、父に尋ねました。すると、普段から冗談ひとつ言わない真面目な父があなたのことを教えてくれました。私は父の話を信じ、あなたに思いを馳せました。しかし父は私を欺いていたのです。
私はあなたを誤解していたことを謝らなくてはならない。そう思い、今このブログに想いをつづっています。
確かに私があなたを誤解したのは父が原因です。しかし、きっとあなたの姿を見た多くの親子が、同じような会話をしてきたのでしょう。堅物に見える私の父も、どこにでもいるような父だったんだと知ったとき、私は少しうれしくなりました。だから、どうかあなたには父を許して欲しいのです。
どうかあなたのその美しい姿を私に見せ続けてください。
そうすれば、あの幼き日の温かい記憶をいつまでも忘れずにいられます。
「おとうさーん、あれ何?」
「ああ、あれはね、フランクフルトの実だよ」
(巷では水辺のソーセージと呼ばれてるらしいです。フランクフルトじゃないのかよっ!!)
了